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「オペレーション・スターシップ」 [├雑談]

「エンデバー、空母に着艦」

2011/4/1 USO通信・時事


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                                        空母カールビンソンに着艦した瞬間のエンデバー(USO/PHOTO)

疑惑
  2月8日に打ち上げられ、同月22日に帰還したスペースシャトル・エンデバー(STS-130)に関して、様々な噂が飛び交っていたのをご存じだろうか。公式発表では、予定通り22日の夜(現地時間22:30)ケネディ宇宙センターに着陸したとされているが、通常行われる着陸のライブ映像配信がなく、着陸の目撃談もない。また、通常帰還後に行われるクルーの合同記者会見も延期された。3日後に開かれた合同記者会見では、こうした相違点についての質問が相次いだが、「時期が来ればきちんとお話します」と言うに留まり、明確な回答はなかった。そのため巷では、「NASAは何か重大事故を隠しているのではないか」、「エンデバーは本当に宇宙に行ったのか」等、様々な憶測が飛び交った。またネット上でも様々な書き込みがあり、某巨大掲示板では、

 

402 :噂のNASAしさん。:2011/03/05(土) 05:09:18.58 ID:iUsdz7Xh
  詳しくは話せないが、実は帰還後の記者会見に出ていたクルーは全員宇宙人にすり替わっているのだ。
  おっと、だれか来たようだ。こんな時間にだれだろう。。。 
    
503 :噂のNASAしさん。:2011/03/05(土) 18:05:04.79 ID:ptr4EC5y
    >>395
    つスペシャルヒント:アポロは月に行っていない
    
534 :噂のNASAしさん。:2011/03/05(土) 23:44:55.96 ID:fgWOlgcJ
    シャトルなんてNASAの捏造ですよ
    
705 :噂のNASAしさん。:2011/03/06(日) 09:27:28.43 ID:LO1S7joA
    そういえばクルーの一人は帰還後に顔色が妙に黄緑っぽかったってばっちゃが言ってた。

756 :噂のNASAしさん。:2011/03/06(日) 10:21:06.66 ID:wewUuFmC
  >>705 
    うはwwwマジかよwwwww

757 :噂のNASAしさん。:2011/03/06(日) 10:22:15.58 ID:iUwosH7Xh
  >>705
  ユメミヤ乙

  そんなことよりプリキュアの話をしようぜ。

といった書き込みがあった他、クルーの会話の様子、表情、ホクロの位置などを、打ち上げ前/帰還後で詳細に比較して、「クルーは全員宇宙人にすり替わっている」説を強く主張する動画投稿サイト、「【使用前】こんなに違う!【使用後】」 には、昨日までに世界中から数百万件のアクセスがあった(下記リンク参照)。 クルーや関係者は取材に一切応じず、NASA広報に問い合わせても「今は話せる段階ではない」の一点張り。こうした対応もますます様々な憶測に拍車をかけた。そして本日ケネディ宇宙センターでクルーも揃って改めて行われた記者会見の席上、「実はエンデバーは米原子力空母・ カールビンソン(CVN-70・満載排水量101,264t)に着艦していた」という驚きの事実が明かされた(プレスリリース:下記リンク参照)。

 

トラブル
  飛行は順調そのものだった。だがISS組み立て等の任務が無事完了し、地球帰還に向けての作業中にトラブルが発生した。「合衆国国防上の機密に当たるため、トラブルの内容、着艦場所についての詳細は明らかにできない」。NASAの報道官はそう前置きした上で、エンデバーの帰還に不可欠な支援システムの一部に重大なトラブルがあり、限定された緯度経度の範囲内にしか誘導、着陸させることができない事態に陥っていたことを明らかにした。誘導可能な範囲内は洋上であり、エンデバーが着陸可能なスペースは存在しない。仮に着水した場合、エンデバーは破損してそのまま水没してしまう可能性が大きい。当該海域は水深が深く、万一水没した場合クルーの救出は極めて困難になる。

  4月1日現在、システムは完全に復旧しているが、トラブル発生当時はシステムの復旧にどれだけ時間がかかるか不明であり、かなりの日数を要することが見込まれていたこと、またシステムは非常に不安定な状態で、全面的にダウンしてしまう可能性が高く、もって5日程度であること、これらの点から帰還は急を要する状態であった。問題解決のための話し合いが行われ、様々なアイディアが出されたが、その中から、「空母に着艦させてはどうか」。というアイディアが飛び出した。エンデバー誘導可能近海で展開中だった空母カールビンソンを呼び寄せ、着艦させようというのだ。

 

検討
  そもそもエンデバーは本当に空母に着艦可能なのか。NASAと海軍関係者による検討が行われた。一例として大型艦上戦闘機・F-14(退役済)の場合、着艦速度は250km/h、最大着艦重量は23.5tで、このあたりがアレスティングフック/ワイヤーを使用した着艦のおおよその上限とされている。一方シャトル・オービターの場合、着陸進入速度約350km/h、エンデバー帰還時の重量は89.29~89.33tと推定されており、着艦時における運動エネルギーはF-14の約7.5倍に相当する。これではとても着艦できない。それでNASAと海軍は、「可能な限り着艦速度を抑える」という方向で可能性を探ることにし、様々な条件を勘案しながらどこまで着艦速度を下げることができるか試算を行った。その結果算出された着艦速度は、273km/h。これは通常より77km/hも遅い。これでF-14との運動エネルギーの差は7.5倍から4.5倍まで縮まるが、速度を減らした分はそのまま着艦時の衝撃の強さに置き換わる。試算の通り着艦速度を273km/hとした場合、エンデバーは1秒間に3.3mの割合で空母の甲板に叩きつけられるようにして降りなければならない。これでもF-14の沈下率:5m/秒と比べれば小さな値だが、オービターの通常の着陸ではまず考えられない数値であり、「制御された墜落」と言える。少しでも運動エネルギーを抑えるためのやむを得ない措置だが、これでもエンデバーの機体強度限界の数値だ。

  エンデバー着艦に関しては計画を困難にする数字ばかりが並ぶが、良い点も2つだけある。1つはアレスティングフック/ワイヤーに掛かる荷重。通常の着艦の際、エンジンをフルパワーにしなければならないが、グライダー飛行のエンデバーの場合はそれがない。このため273km/hで着艦した場合、アレスティングフック/ワイヤーに掛かる荷重はF-14の約2.6倍となり、運動エネルギーよりその差は更は縮まる。ただし当然のことながら着艦のやり直しはできない。2つ目は、エンデバーの機齢。他のオービターが1981~85年に初飛行を行ったのに対し、チャレンジャー号消失を受けて建造が決まったエンデバーは1992年初飛行で最も新しく、それだけ耐衝撃性に優れていることが期待された。また着陸用フックを装着しているオービターはアトランティスとエンデバーのみであり、今回の作戦が可能となった。実はフック/ワイヤーに掛かる荷重をF-14の約2.6倍に縮めた程度ではまだまだ足りないのだが、着艦の際、エンデバーの莫大な運動エネルギーを受け止めるのはフック/ワイヤーだけではない。「ギリギリだが、これなら止められる」。 NASAと海軍の技術者は結論をまとめ報告書を提出した。「着艦は技術的に可能」。

 

始動
  「空母カールビンソンは艦隊を挙げて72時間以内にエンデバー回収を完了せよ」。報告を受けて極秘裏に大統領令が発せられ、エンデバー着艦プロジェクト("オペレーション・スターシップ")が発動。カールビンソン、ケネディ宇宙センター、エンデバーは直ちに着艦に向けた準備を本格化させた。カールビンソンは着艦ポイントまで移動し、無事エンデバーを回収したら、今度は降ろすために指定の港に向かわねばならない。再び作戦海域での任務に復帰するまでの約72時間、カールビンソンと随行する艦艇は本来の作戦から外れることになり、国防上の"すき間"が生じてしまうことになる。このこともエンデバー帰還に関する厳しい箝口令につながった。空母カールビンソンは着艦ポイントへの移動と、スケジュール、手順の確認、エンデバー、ケネディ宇宙センターとの通信確立、並びに万一の事態に備えるため、DSRVを含む特別レスキューチームを編成した。また、着艦後のエンデバーから推進用燃料を抜き、宇宙飛行士たちを降ろすための機材とスタッフの搬送が実施された。

  一方、ケネディー宇宙センターとエンデバーも必要な準備に多忙を極めた。通常の着陸とは異なり空母への着艦は、約56km/hで斜めに移動する滑走路にピンポイントで降りなければならない。気象班からの報告では、着艦時の海域は雲量も少なく、風向風速共安定しているだろうとの見通しが示されたが、 場合によっては急遽滑走路の向きが変わってしまい、それに合わせて着艦進入の方角を変更しなければならない可能性もある。高度400kmの軌道上を2,800km/hで飛行するエンデバーが、タッチダウンの瞬間には、正確に273km/hまで減速し、降下率3.3m/秒の状態になっている必要がある。この速度より速ければ止まりきれずに水没の危険が、逆に遅ければ沈下率が更に増えてしまい、エンデバーはその衝撃に耐えきれず、破損して燃料に引火するなど重大事故を招く恐れがある。また、仮に着艦速度が266km/hを下回ってしまった場合、空母の甲板も損傷する恐れがある。通常の着陸マニュアルを大幅に逸脱した進入速度、沈下率に加え、「動く滑走路」。これまで想定したこともない手順となるため、最終進入/着陸誘導フェーズのシーケンスをゼロから作成する必要があった。着艦やり直しができないエンデバーに失敗は許されない。そのため、規定通りの高度、速度で空母まで導くその手順は絶対確実なものでなければならない。シーケンスが出来上がったらそれに基づいたシミュレーションを繰り返して問題点を洗い出し、検討を行い、修正を加えた。更に、関係する膨大な量のマニュアルの準備、着艦の際に使用するエンデバーのHUD用ソフトも一部書き換えが行われた。こうした作業が帰還に必要な最終データをエンデバーに送信するギリギリまで続けられた。

  エンデバーの着陸用フックに関しては以前から、「実際に使用することはまずないだろう」と言われており、「シャトル三大無用の長物の一つ」などと揶揄されていた。 フックの動作チェックは飛行ごとのチェックリストから除外されており、直近の動作確認の記録は9か月前に実施されたD整備の時のものだった。このためフックがきちんと作動するかどうか、ISSから目視で確認が行われた。エンデバーのコックピット内で着陸用フックの操作パネルは非常に操作し難い場所(コマンダー席の頭上、しかもかなり後方)にあって目立たないため、「船長!」と赤ペンで大書きした紙が貼られた。また、オービターには着陸に関係した様々な警報装置があり、例えば速度が312km/h以下になると、失速警報が作動して機首上げ操作にプロテクションがかかる他、80ft以下で沈下率が2.5m/sを超えた場合も同様に警報とシェイカーが作動する。今回の着艦は、従来のマニュアルから大きく外れた操作となるため、着艦進入の際様々な警報、プロテクションが作動してしまう。そのため、大気圏突入前にあらかじめこうした警報を外す措置が取られた。NASAの表現を借りれば、ケネディ宇宙センターとエンデバーのクルーは協力してエンデバーを"艦上機に改造"した。

 

帰還
  着艦予定2時間15分前、気象班から「着艦に必要な気象条件は全て満たされている」と最終報告。着艦予定2時間前、カールビンソン、ケネディ宇宙センターの受け入れ態勢がすべて整ったことを確認、ケネディ宇宙センターからエンデバーに対して、正式に軌道離脱のゴーサイン。着艦61分前、帰還のための最終確認を終えたエンデバーは軌道離脱のためOMSによる減速噴射を3分32秒間実施。着艦32分前、大気圏再突入。4回のS字ターンにより位置/運動エネルギーを消費するための操作が順調に進められ、エンデバーは規定通りの減速を行った。ここまではいつもと同じ手順だ。そして問題の最終進入/着艦誘導フェーズに移行。コックピット、ケネディ宇宙センターの緊張が一段と高まった。少しでも早く減速を開始できるように、エアブレーキ、パラシュートの操作は、ヒカル・シュナイダー船長が手動で担当。パラシュートは放出から展開までに生じる約2.4秒のタイムラグが考慮された。万一に備えて待機するフライトデッキ・クルー、伴走する救助艦、救助ヘリ、フロッグメン。シャトル・オービターの着艦という前代未聞の瞬間を全員が固唾を飲んで見守る中、衝撃波が轟き、真っ青な空に白く輝く機体が姿を現した。ゆっくりとファイナルターン。そして着艦進入コースへ。着艦17秒前、アレスティング・フックダウン。着艦15秒前、ギヤダウン。続けて機首上げ。時速273km、降下率3.3m/秒で安定。機体は非常に安定しており、まるで艦尾に吸い寄せられるように美しい線を引いた。着艦1秒前、エアブレーキとパラシュートがほぼ同時に展開。タッチ・ダウン、No,1ワイヤーにヒット。新品のワイヤーはリミットいっぱいまで減衰調定されていたにもかかわらず完全に伸び切ってしまい、アレスターフックは根元から千切れ飛んだ。更に三種類のブレーキでも間に合わず、機体はエマージェンシーバリアに突っ込んでやっと停止。後に主脚のタイヤが両輪ともスローパンクチャーしていること、脚部には複数のクラックがあることが確認されたが、これらはすべて予想通りのことであった。

  空母への着艦を務めたのは、ミッキー・サイモン操縦士。彼は元海軍パイロットで、F-14のパイロットとして同空母に3年間乗務していた経歴の持ち主でもあり、今回の着艦劇は彼にとって思わぬ古巣への再訪となった。彼はこれまで操縦士として4回シャトルに搭乗しているが、帰還後に毎回行われる着陸についての審査でも常に高評価であり、今回の着艦の際も、各フェーズごとに規定されていた高度/速度を計ったようにトレースしていた。改めて行われた会見でも、 「(着艦の)ブランクはあったが難しいとは感じなかった」と淡々と語った。船長によれば、「空母に着艦することが決まった時も、また実際の着艦の際も全く動じる様子はなかった」という。カールビンソン時代のミッキー・サイモンをよく知る人物がいる。同空母の飛行隊長を務めるグレッグ・ゲイツだ。彼はこう語った。「着艦をやるのがあの"火の玉ミッキー"だと知らされたので、『何も問題ない。全てうまくいく』と仲間と話していたよ」。

  エンデバーから「ホイール・ストップ。我々は艦上にいる」と伝えられると、 ケネディ宇宙センターから「エンデバー、ウエルカム・ホーム」という返信と共に大きな歓声が沸き起こった。無事エンデバーから姿を現したクルーたちは、甲板上で海軍式の手荒な歓迎を受けた。巷では早くも「ハリウッドで映画化間違いなし」と噂されている。

 

関連リンク:
NASAプレスリリース「エンデバー、システム障害のため空母に着艦した件につい…→
YouTube:【使用前】こんなに違う!【使用後】STS-130 Endeavour crew,dif…→(閉鎖された模様)     
シャトル着陸動画(コックピットビュー)→      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今日は四月一日)


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