A:どの位燃やされる? [├雑談]
(すっかり忘れておられたかもしれませんが)先日こんなクイズを出させて頂きました。
JAL,ANAの777でも使用されている代表的なターボファンエンジン・PW4090の場合、
ファンから吸い込まれた空気のうち、
圧縮機に送られるのは全体の何パーセントでしょうか?
A:14% B:28% C:61%
このエンジンのバイパス比は、型式により差はあるのですが、
ここでは"6.1"で話を進めます。
「バイパス比」とは、ファンから吸い込んだ空気のうち、
圧縮機、燃焼室をバイパスする空気と、圧縮機に入り、燃焼室を経てタービンから噴出するガスの重量比のことで、
バイパス比=ファンから噴出する空気の重さ÷タービンから噴出するガスの重さ
という式で出します。
ファンから吸い込まれた空気を100とすると、圧縮機に送られるのは14ということになります。
ということで、正解は A:14% でした。
初期のジェットエンジンにはファンが付いておらず、かなり細い外見をしていました。
その後ファンが付くようになったのですが、大量の空気をゆっくり噴出することで効率が飛躍的に高まりました。
また、燃焼ガスを大量の空気で包み込むように噴出するため、騒音の低減効果もあります。
そのため「バイパス比」は、低燃費、エコなエンジンであることを示す指標の一つになっており、
このタイプのエンジンにとっては欠かすことのできないスペックで、
「今度のエンジン、バイパス比はいくつ?」なんて尋ねると、とてもそれっぽいです。(o ̄∇ ̄o)
PW4090の場合、前方から取り込まれた空気のうち、圧縮機に送られるのはたった14%であり、
残りの86%はそのまま推力として後方に噴出しているわけで、
エンジン全体の推力でも大部分はファンで発生させていることになります。
「今のジェット旅客機はほとんどプロペラ機みたいなものだ」
と言われる所以ですね。
ところでこちら■ には、
「圧縮された空気はすべて燃焼に使用されるのではない。
その大部分は燃焼室の冷却、燃焼ガスそのものの温度を下げることに使用し、
圧縮空気のうち実際に燃焼に使用するのは20~30%に留まる」。
というような内容が書かれています。
残念ながらPW4090の場合は具体的にどの程度燃焼に使用するのか、
データを見つけることができなかったのですが、
このエンジンに「燃焼に使用するのは20~30%に留まる」を当てはめると、
エンジンの前方から取り込まれた空気のうち、圧縮機に送られるのは14%で、
燃料を加えられて燃焼するのは14%の中のさらに20~30%に留まるわけですから、
燃焼に使用されるのは全体の2.8~4.2%に過ぎない。ということになります。
ジェットエンジンというと、あの大口からガーッと大量の空気を取り入れて、
なんだかいかにも燃料をたくさん燃やしてそうなイメージですよね。
でもあの大口から取り入れた空気のうち、実際に燃焼に使用するのはたった3~4%に過ぎない。
と考えると、ちょっとはイメージが変わります(よね?)。
デリバリーが待たれる787に採用されるエンジンのバイパス比は、9.5とか11という数値で、
圧縮機に入らずそのまま噴出する空気はそれぞれ、90.5%と91.7%に相当しますから、
圧縮機送りになる空気は1割にも満たないことになります。
バイパス比11のエンジンに 「20~30%」を当てはめると、エンジン入口から取り込んだ空気のうち、
実際に燃焼に使用されるのは、たった 1.66~2.5% ということになります。
さらに燃やさないです。