SSブログ

福永(掛塚)飛行場跡地 [├空港]

    2012年3月訪問 2021/1更新  


無題g.png
1/25000「掛塚」大正6年測図・大正8.4.30発行「今昔マップ on the web」より作成

 

静岡県‎磐田市‎掛塚にあった「福永(掛塚)飛行場」。

先頭のグーグルマップの赤マーカー地点、そして大正6年の地図の赤矢印部分に、現在飛行場跡の説明版があります。

当飛行場は、1919年開設、天竜川改修のため閉鎖される1928年までありました。

上に貼った地図は大正6年(1917年)測図なので、飛行場開設2年前のものです。

昭和13年の地図と比較してもこの囲われた地割に変化はないため、

飛行場として運用していた期間もこんなだったのだと思います。

ぐるりと囲われた独特な地割の中に飛行場があったのですね。

 

■国立国会図書館デジタルコレクション「報知年鑑 大正14年」

に民間飛行機操縦術練習所のページがあり(下記リンク参照)、

名称 福長飛行機製作所
所在地 静岡縣掛塚町
代表者 長谷川鐡雄

とありました。

長谷川鐡雄氏は、福永飛行機製作所の所長さんだった人物です。

■同「報知年鑑 大正15年」 

には、本邦民間飛行場調〔大正14・8調〕のページがあります(下記リンク参照)。

管理人 長谷川鐡雄
種類 陸上
位置 静岡縣磐田郡掛塚町南端天龍川左岸
面積 2,100,000坪 離着陸場区域の外航空し得る上空地域を含む

■同「報知年鑑.大正16年」

には、本邦民間飛行場調〔大正15.8〕として27の民間飛行場の一覧がありました(下記リンク参照)。

使用者 長谷川鐡雄
種類 陸上
位置 静岡縣磐田郡掛塚町南端天龍川左岸
面積 50,000坪

面積は5万坪とあり、これは16.5haに相当します。

先頭のグーグルマップ、今昔マップの囲む地割をそのまま作図したのですが、

このシェイプ部分は 23.5haでした。

囲まれた地割(23.5ha)の中の、適地(16.5ha) を飛行場として使用していた。

ということではないかと思います。

DSCN0026.jpg

赤マーカー地点

説明版が設けられていました。

天龍川を背にして撮っているので、飛行場敷地西端から中央部分を向いていることになります。

当時はこの目の前でヒコーキが飛ぶ風景が広がっていたのですね~。

史跡案内(全文) 福長飛行場跡 福長飛行場は、大正八年(一九一九年)福長飛行機研究所の付属飛行場として天竜川の河川敷に作られた。福 長浅雄、四朗、五郎の兄弟は浜名郡飯田村(現浜松市大塚町)の出身で、兄の浅雄は、羽田飛行学校に学び、その後千葉の伊藤音二郎飛行場に入門し飛行技術を 修得し、掛塚に飛行機研究所を創立した。格納庫内に工場があり大工、鍛冶の職人数人がいた。名機天竜七号や、日本最初の六人乗り大型旅客機が作られた。飛 行場には飛行訓練生が十四、五名がおり、一流のパイロットがこの飛行場より巣立ち活躍した。飛行家として知られた兄弟は、関東大震災の時、掛塚飛行場より 所沢間を飛び通信の確保に活躍した。飛行場の閉鎖後、格納庫は小学校(現竜洋西小学校)の雨天体操場として長い間使用された。(平成十八年三月)磐田市教 育委員会

飛行場が作られたのが1919年でしたから非常に早い時期に開設したのですね。 

早い時期に飛行場を開設しただけでもすごいことですが、

特筆すべきはここで日本初の旅客機が作られ、操縦士養成が行われたことです。

他の研究所が3人乗りヒコーキを製作したことに刺激を受け、1922年に旅客機の製作に取り掛かりました。

こうして同年10月に完成したのが天竜10号でした。

全長9.4m、全幅12.95m、全高3.10m、自重1100kg、全備重量1,800kg、主翼面積38.0㎡。

イタリアフィアット製水冷式直列6気筒300馬力のエンジンを搭載し、機体は一部ジユラルミン、他は木製、翼は布張り。

時速180km、滞空時間4時間、2人の操縦士と4人の乗客が乗れるもので、

客室には豪華な絹張りでルームランプが付いていたのだそうです。

この天竜10号、陸軍省航空局の性能試験には合格したのですが、「法整備がない」として許可が下りず、

残念ながら旅客輸送はできなかったのだそうです。

 

福長製作所で養成された人物の中には、

後にANAの創立に携わった鳥居清次、女性パイロットの草分けとなった今井小松がいます。

製作された木製プロペラが現存しており、浜松市の南陽図書館(黒マーカー地点)2Fに展示されています。

かなり大きなもので、当飛行場が広報で特集された際のコピー等も貼られていました。

これは是非ブログにアップさせて欲しいと思い、図書館職員の方に許可を求めました。

「全国にこういうのが大好きな仲間がいますので、是非ブログに掲載させて頂けないでしょうか」

すると、「図書館は展示場所を提供しているだけで、所有者の了承無しに勝手に許可することはできません」

とのことで、所有者に尋ねて後日連絡を頂けるという話に。

「埼玉からこれを見にはるばる来たので、せめて撮影だけさせて欲しい。許可が下りなければ必ず破棄しますから」

と、小心者のオイラにしては随分食い下がって懇願したのですが、

「当分の間展示していますので、許可が出たら都合の良い時にいつでもまたお越しください」

とのことで、撮影も許してもらえませんでした。

許可が下りればまた行く気満々だったのですが 数日後、職員の方から丁寧な連絡があり、

「『郷土研究家の方等の撮影は許可しますが、個人の撮影はお断りします』とのことでした」と。

そんなわけで残念ながら撮影許可は下りませんでした(;´Д⊂)ウッ…

博物館等最初から撮影禁止を謳っている数か所を除くと、

アチコチ出掛けて飛行場とヒコーキ関連の場所を撮らせて頂き始めて10年、548か所目にして初の撮影拒否でした。

とほほ。_| ̄|○ il||li

静岡県の方は皆さん非常に親切な方が多くて個人的に大好きな県なのですが、

そこまで仰るからにはきっとそれなりのお考えがあってのことなのでしょう。

非常に残念なのですが、所有者の方がそう仰るのなら仕方ありません。

 

D20_0162.jpg

紫マーカー地点。

福永氏の母校浜松市飯田小学校にある顕彰碑。氏が亡くなった翌年作られました。 天竜10号のレプリカが載っています。

同小学校には福永氏の紹介コーナーがあり、天竜3号のプロペラが展示されています。

また、毎年春に自分の夢を紙飛行機に書いて飛ばす「夢を飛ばそう集会」が行われています。


      静岡県・福永飛行場跡地     
福永氏は生涯で70回も墜落を繰り返しており、自らを「墜落王」と呼んでいたのだそうです。1928年飛行場閉鎖後はタクシー会社や薬局を経営し、航空界へは復帰しませんでした

福永飛行場 データ
設置管理者:長谷川鐡雄
種 別:陸上飛行場
所在地:静岡縣磐田郡掛塚町南端天龍川左岸(現・磐田市‎掛塚‎)
座 標:N34°39′54″E137°47′45″
標 高:2m
面 積:16.5ha
着陸帯長:750mx400m(不定形)
(座標、標高、着陸帯長はグーグルアースから。他は報知年鑑から)

沿革
1893年 浜名郡飯田村(現南区大塚町)にて福永浅雄氏生誕
1906年 天竜木材会社に就職(13歳)
1909年 父や兄と兵庫に移住して製材業を興し、成功を収める(16歳)
1911年 単身上京し、所沢陸軍飛行場にて三カ月間、徳川好敏大尉の無給助手として働く(18歳)
1916年 日本飛行学校でも操縦技術を学ぶ。フランスからブレリオ25型(天竜1号)を購入、離陸できず(23歳)
1917年 フランスからグレゴアシップ号購入。着陸失敗で墜落
      滋賀県八日市飛行場で、コードロン式初歩練習機を模倣して地上滑走練習機(天竜2号)を製作(24歳)
1918年 伊藤飛行機製作所製・伊藤式恵美第2型(天竜3号)にて天竜川の河原に郷土訪問飛行。観衆4万(25歳)
1919年 9月 「福永飛行機研究所」設立。福永飛行場付設。飛行機の製作を開始。
     11月、アメリカ製デラックス8馬力エンジン搭載の単葉の地上滑走練習機(天竜5号)完成(26歳)
1921年 浜松地方政財界の有力者が発起人となり、同研究所は「福長飛行機製作所」となる
     飛行機の設計、製作、民間飛行家の養成を始める。全国から6人の有志が集まる。
     7月、イスパノ・スイザ180馬力エンジン搭載の複葉機(天竜6号)完成
     11月、ニューポール式83型ル・ローン80馬力エンジン搭載の2人乗り複葉機(天竜7号)完成(28歳)
1922年 ホールスコット125馬力エンジン搭載機(天竜8号)完成。
     飛行操縦練習生用中級練習機(天竜9号)完成。10月、日本初の旅客機(天竜10号)完成。(29歳)
1923年 関東大震災発生。天竜7号が通信確保に活躍。この頃から不況のため資金が枯渇(30歳)
1928年 天竜川改修のため飛行場閉鎖
1929年 浜松市三方ヶ原に工場を移転し、浜松飛行機製作所と改称
1930年 格納庫が竜洋西小学校に移管され、雨天体操場として長く利用された
1980年 福永氏死去(88歳)
*天竜4号は欠番

関連サイト:
磐田市立図書館 発見!磐田の著名人   
国立国会図書館デジタルコレクション/報知年鑑 大正14年(174コマ) 
国立国会図書館デジタルコレクション/報知年鑑.大正15年(183コマ) 
国立国会図書館デジタルコレクション/報知年鑑.大正16年(225コマ) 

この記事の資料:
現地の説明版


コメント(9)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー