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717の話 [├雑談]

0→2→3→4→5→6→7→1→8

これなーんだ?

 

 

答えはボーイング旅客機のモデルナンバーです。

戦後ボーイング社はジェットエンジンで飛ぶ旅客機開発にとりかかり、

最初に完成したジェット旅客機に707というモデルナンバーを与えました。

707から現在開発中の787まで、今のところ全部で9機種です。

747が"ジャンボ"で、国内だと737とか767は見たり乗ったりなじみ深い部類なわけですが、

(…じゃあ、707ってどんなヒコーキだろう。。。717ってどんななのかしらん??)

なんてことがきっかけでヒコーキのおべんきょーし始めて、

ハッと気がついた時にはすっかりエアライン系マニアファンなってしまっていたΣ(゚Д゚;)

という方、きっと多いと思います。

そう。 ボーイングの各モデルナンバーが気になるというのは、深みにハマってしまう第一歩なのです。

夏休みのこの時期、お子様からだしぬけに「…お父さん727に乗ったことある?」などと聞かれてしまうというのは

充分あり得ること。そんな時は是非慌てず冷静に対処してください。

「どうだったかな、よく覚えてないな。そ、そんなことよりタカシ、久しぶりに父さんとキャッチボールでもしないか?」

などとはぐらかすとよいでしょう。

この記事では各モデルナンバーについては触れませんのでご安心ください。

脱線してしまいました。

ラッキーナンバーである7の間に順番に数字をはさんでいくという命名法なわけですが、

なぜかずっと717がなくて、吸収合併したマクダネルダグラス社のMD-95開発を引き継いだ際、

空いていた717をこの機体に与えました。

「なぜずっと717が空いていたのか?」 という、そのスジの方には分かり切ったお話を。

 

話は1950年代までさかのぼります。

1952年、ジェット旅客機コメット(イギリスのデ・ハビランド社製)が初就航。

世界の主要航空会社は先を争うようにこの世界初のジェット旅客機を発注しました。

このコメット、世界初のジェット旅客機ということと共に極秘のうちに開発が進められたこともあって、

非常にセンセーショナルなデビューとなり、

レシプロ旅客機の性能向上に明け暮れていた他の航空機メーカーにとっても不意を突かれる形となりました。

ジェット機に対する反響の大きさを見たボーイングは、すぐさまジェット旅客機の原型機を自主開発します。

これが"367-80(ダッシュ・エイティ)"という機体で、1954年に初飛行しました。

…と書いてしまうと、初のジェット機をいとも簡単に作ってしまったような印象を受けますが、

実はボーイング、1947年に6発ジェット爆撃機B-47を、

そして1952年には8発ジェット爆撃機B-52を初飛行させています。

爆弾を積んで途中で落とすか、人間を積んで目的地に降ろすかが異なるだけで、

既にジェット機開発の実績があったわけですね。

この367-80をベースに改良した機体は、まず空軍に空中給油機として採用されました。

空軍はこの機体を"KC-135"として採用しました。

そしてボーイングは367-80を改良したこの空軍向けの機体に新たに自社ナンバーを与えることにしました。

改良型の旅客版は707とすることが既に決まっていたので、

ボーイングはこの空中給油型機に717というナンバーを与えました。

そのため、続けて作られた旅客機は727となりました。

 

「原形機367-80」から空軍機717(KC-135)と旅客機の707が生まれたわけで、

717と707は同じ親(367-80)から生まれた姉妹機ということになります。

厳密には胴体その他いろいろと寸法が異なるのですが、

細い四発エンジン、時代を感じさせる無骨な垂直尾翼と、その外見は非常によく似ています。

冒頭「ずっと717がなかった」とか書きましたが、

そんなわけで KC-135=717 なので、ホントはちゃんと当時から存在していて、

でも軍用機に社内用に与えられたナンバーだったため、

「ボーイング社の旅客機シリーズ」では717がぽっかり抜けてしまい、

"表"には出てこなかったわけです。

 

近年MD-95開発を引き継いだ際再びこの717というモデルナンバーを復活させたわけですが厳密には、

KC-135=717-100
MD-95 =717-200

で、両機はちゃんと区別されています。

「あ、717って言っても厳密にはダッシュ200の方だけどさー」なんて言うと、とってもヲタツウな感じがしますね。 (o ̄∇ ̄o)

今度友人、ご家族との会話でたまたま717が話題に上る機会がありましたら是非、

  「それってダッシュ100の方?」

とか言ってみるとよいです(そんな機会ないって)。

 

話を戻します。

コメットは「世界初のジェット旅客機」として航空史に名を残すことになりましたが、

同時に「就航1年後にナゾの墜落事故が続出し運航停止となる」という非常に不名誉な記録も残してしまいました。

原因究明と対策を終えた1958年には、はるかに魅力的な707が就航。

勝負アリなのでした。

続けて707は、ワンテンポ遅れて登場したダグラス社のジェット旅客機DC-8(707とキャラかぶってる)

との熾烈な販売競争に突入します。

今でこそ世界の中・大型旅客機市場をエアバスと二分するボーイングですが、

当時の旅客機市場では名門ダグラス社より格下でパッとしないメーカーでした。
(実際にダグラス社のヒコーキと競合してコテンパンに負かされたりしていた)

日本でも当時、「707とDC-8、どっちを採用する?」ということで選定作業が進められました。

いかにも軍用機っぽい男性的な外観の707に対し、DC-8は「空の貴婦人」と称された優美なヒコーキでした。

日本で選ばれたのがDC-8だったことも相まって、

特にベテランのエアラインファンの方にはこちらの方が人気が高いようです。

ところが日本国内での人気はともかく販売面で見ると、より多くの航空会社の支持を集めたのは707の方でした。
(B707の生産数1,010機に対し、DC-8は556機)

ボーイングはこの707でダグラス社のDC-8に見事勝利し、念願の旅客機トップメーカーの座を獲得、

その後一連の7*7シリーズでの大成功へとつながっていきます。

 

「将来ボーイングはダグラスを吸収合併するんだよ」

 

受注合戦が始まった当時の人にこんなこと言ったとしたら、

「ハア? 逆でしょ?(失笑)」というリアクションだったはず。

その位当時の旅客機メーカーとしてのダグラス社のブランド力は絶大でした。

717-100は「ダグラス社に初めて勝利した機体の姉妹機」であり、

717-200は「ダグラス社を吸収した際、ダグラス最後の開発機となった機体」。

717は、ボーイングの躍進が始まった機体であり、

ダグラスが引導を渡された機体でもあります。

モデルナンバーが同一であるというところに歴史の巡り合わせを感じてしまうオイラなのです。

 

(次回から「北海道強化月間」デスヨ)


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コメント 15

an-kazu

横田で"ストラトタンカー"に接近したとき、
旅客機っぽい形状だなぁと思ったのですが、
そのような経緯があったのですねΦ(・_・)メモメモ
by an-kazu (2010-08-08 07:26) 

sak

飛行機の名前、そんな歴史があったのですね( ..)φメモメモ
B-○○...航空機の歴史、発展も戦争が関係しているのですね
これからはみんなの幸せ、平和のためにどんどん素敵な飛行機が
できてくるといいなぁ
by sak (2010-08-08 07:26) 

鹿児島のこういち

記憶があやふやで、ボーイングの話しやコメットの事、以前、なにかの本「丸」か「エアライン」で読んだようなf^_^;
コメットは、漫画にコメット号に乗って世界一周かヨーロッパだったかに行くというのも読んだようなf^_^;まったく記憶があやふや、思い出せない(T_T)
コメットと言えば、1920年代のドイツの旅客機でもなければ、ロケット戦闘機メッサーシュミットMe163 コメートでもない、ましてや秋水ではないですね(゜o゜)\(-_-)イギリスの旅客機なんですよね(^O^)
やはり、漫画のコメット号がぁ(>_<)誰か思いださせてぇ~(T_T)
by 鹿児島のこういち (2010-08-08 08:03) 

カンクリ

マニアさんの間では、「ボーイング747」を「B4」とか略すし、「-(ダッシュ)」の後の数字も拘ったりと とてもついて行けないのです。f(^^;

by カンクリ (2010-08-08 08:24) 

me-co

マニアックな短命機717のことばかりでなく、航空機メーカーの栄枯盛衰を紐解いていますね^^画像が無くても面白い記事です。
ところで、7○7の呼称について、「1の後はEになるはずだったのに、8にしちゃったら、残りは9しかないぢゃないのっ!?」と気にしている方は結構居ますかねー(--;)
by me-co (2010-08-08 10:53) 

セバスちゃん

とっても楽しく読んでしまいました。
練習:「それってダッシュ100の方?」
僕の実践篇は、まだまだ遠い未来のようですけど<笑>
by セバスちゃん (2010-08-08 11:07) 

masa

717とか全く知りませんでした。
このナンバーのつけ方を知って興味がわきました。
by masa (2010-08-08 19:58) 

yatoho

とりさん こんばんは

今日もひとつ賢くなりました^^
今に本が出ますよ!「とりさんの 良くわかる飛行機と空港のおはなし」私一番に買わせていただきます^^v。
by yatoho (2010-08-08 20:59) 

tooshiba

えーこせーすい。
蟻が象を食った。みたいなお話ですね。
「-100」あるいは「-200」を自分の口から発せられる機会はないでしょうが、マクダネルダグラスのように、某重工も喰われtげふんげふん。

ところで、787チン☆⌒ 凵\(\・∀・) マダァ?
by tooshiba (2010-08-08 21:52) 

とり

皆様 コメント、nice! ありがとうございます。

■an-kazuさん
>旅客機っぽい
元々「旅客機造ろう!」と思って造ってますからね^^
それと、ボーイングは空軍に買い替え需要があるだろうと見ていて、きっと空軍も買ってくれるはずだという予測が最初からありました。
空軍に採用されるし、旅客機はダグラスに勝利するし、大成功ですね。

■sakさん
ヒコーキの発展と戦争は切っても切れない関係ですよね~。
>これからはみんなの
仰る通りと思います。

■鹿児島のこういちさん
「コメット」というワードで鹿児島のこういちさんの頭脳からはこれだけ検索できるんですね(@_@)
オイラはコメットさんしか浮かばないや~^^;

■カンクリさん
オイラもBIや室谷さんについてお仲間としゃべっているカンクリさんは、一体ドコの国の方だろう??
ってくらいついていけませんので安心してください(XДX)

■me-coさん
ここで707やDC-8の写真をはさめればよかったんですけどね~。
オイラひよっこなもので。すみません^^;
>残りは9しか
9を使った後はどうするのか。これ気になってる方多いでしょうね~。
数年前の情報ですけど、ボーイングも「まだ先のことは考えていない」。とコメントしてたらしいです。
7E7事情については以前こんな記事書きました。
http://1901rjtt-to-roah.blog.so-net.ne.jp/2007-07-20
宜しければ、こちらの2005年1月の部分をご覧くださいませ。

■セバスちゃんさん
アハハ、練習までしていただいてありがとうございます^^

■masaさん
すごくマイナーですからね。ご存じないのが普通と思いますよ。

■yatohoさん おはようございます。
おお、買って頂けますか!
ありがとうございます~m(_ _)m

■tooshibaさん
>蟻が象を
確かにそうですね~。
実はボーイング、戦争中は軍用機で大儲けしてたんですが、
戦争が終わればその需要は激減することが分かり切ってますし、
軍が大量に買った輸送機を破格で民間に放出するし、
そんな中で買ってもらえる魅力的な民間機を開発できないとヤバいという危機感もあったはずです。
>某重工
我が国の航空宇宙産業の希望ですからね。是非これからも頑張って欲しいです。
by とり (2010-08-09 07:09) 

ジョルノ飛曹長

なるほどー
717は軍用機でしたか。^^
冷戦構造の世の中に突入して、この時期の飛行機技術の発展は水面下でめざましいものがありましたよねー。
by ジョルノ飛曹長 (2010-08-09 12:24) 

とり

■ジョルノ飛曹長さん
>水面下で
戦時中のドイツの研究成果が一気に開花した時期ですね。
by とり (2010-08-09 20:54) 

春分

マニアじゃないからわからない話ばかりです。
まあ航空機会社は開発費もかかるしどんどんくっついて名前が長くなるのが常でしたね。
by 春分 (2010-08-10 11:17) 

OILMAN

こんにちは。
かなりマニヤックなお話、ありがとうございました。
言われてみると確かに1が抜けていたと思いましたし、ダッシュ○○という言い方もANAに乗るとよく聞くキーワードですね。
ちょっとだけヒコーキマニヤの階段を上れた気がします。
by OILMAN (2010-08-11 21:58) 

とり

■春分さん
確かに「エッ! あの名門航空会社が!!」とビックリするような会社がどんどん消えてますよね。

■OILMANさん こんにちは。
上っちゃいましたか。
ふふふふ。
by とり (2010-08-15 20:44) 

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